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身元保証人がいなくても入院できる?おひとりさまが準備したいこと

最終更新日:2026年10月1日

「入院するには身元保証人が必要です」

病院からそう言われたら、頼める家族がいない方は不安になるかもしれません。

「保証人をお願いできる人がいなければ、入院できないのだろうか」

「突然入院することになったら、誰に連絡してもらえばいいのだろう」

厚生労働省は、2018年4月27日付の「身元保証人等がいないことのみを理由に医療機関において入院を拒否することについて」(医政医発0427第2号)において、身元保証人等がいないことのみを理由とする入院拒否は、医師法19条1項に抵触するとしています。

ただし、「保証人がいなくても入院できる」=「何も準備しなくてよい」ということではありません。

実際の入院では、緊急連絡先、入院費、入院中に必要な物品、退院後の生活、死亡した場合の対応など、病院側が確認しておきたい現実的な事項が複数存在します。

このコラムでは、身元保証人がいないおひとりさまが、入院前に何を整理しておけばよいのかを具体的に解説します。

結論|身元保証人がいないことだけを理由に必要な入院を拒否することはできません

前述の通り、厚生労働省は身元保証人等がいないことだけを理由に患者の入院を拒否することは医師法19条1項に抵触すると整理しています。

さらに、同省の「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」(以下「ガイドライン」といいます)では、身寄りがない人にも必要な医療が提供されるよう、医療機関や関係機関に向けて具体的な対応方針が示されています。

とはいえ、実務上の理由から、身元保証人を求められる事例はあるようです。

今まさに「保証人がいない」と言われて困っている場合

まず、病院の患者相談窓口、医療福祉相談室、医療ソーシャルワーカー(MSW)などへの相談を希望してみましょう。

「保証人がいません」とだけ伝えるのではなく、緊急連絡先の有無、入院費の支払方法、退院後の生活について現在分かっている状況を具体的に伝えると、病院側も必要な支援を整理しやすくなるでしょう。

身寄りがない場合でも、医療機関、行政・福祉機関、地域の支援者などが連携して対応することが、ガイドラインでも想定されています。

ただし、身元保証人がいない場合でも、病院側が確認・調整を必要とする事項がなくなるわけではありません。

病院が「身元保証人」「身元引受人」などと呼んでいる人には、実際には複数の異なる役割が期待されています。

ガイドラインでも「身元保証」という一つの法律上の明確な資格があるというより、医療機関が慣習的にさまざまな役割を包括して求めている実態を前提にしています。

つまり問題は、「保証人がいるか、いないか」ではなく、入院中や退院後に発生する個々の役割を誰がどのように担うのかということです。

なぜ病院は身元保証人を求めるの?

ガイドラインでは、医療機関が「身元保証・身元引受等」に期待している主な機能を次の6つに整理しています。

病院が本当に必要としているのは、必ずしも「全部を一人で引き受ける保証人」ではありません。

内容によっては、医療ソーシャルワーカー、ケアマネジャー、行政・福祉機関、民間サービス、成年後見人など、複数の関係者や法制度で分担して対応することが考えられます。

緊急連絡先・身元保証人・連帯保証人は同じではありません

病院で使われる用語は似ていますが、求められる役割や法的な責任は同じではありません。

緊急連絡先
病状の急変などがあった場合に、病院から状況の連絡を受ける窓口です。緊急連絡先として登録されたというだけで、直ちに本人の入院費について法的な支払義務を負うわけではありません。
(※ただし、別途連帯保証契約などを結んだ場合はその契約内容によります)

身元保証人・身元引受人
病院や施設によって求めている内容が異なります。緊急連絡、退院支援、死亡時の対応などを一括して指していることが多いため、求められた際には「具体的にどの役割を想定しているのか」を確認することが大切です。

連帯保証人
連帯保証契約を締結した場合、その契約の範囲で本人の入院費等について連帯保証債務を負います。単なる緊急連絡先とは、法的な責任が異なります。

医療行為の同意を身元保証人に任せることはできる?

身元保証人に関して誤解が多いのが「医療行為への同意」です。

病院によっては身元保証人に手術同意書への署名を求めることがありますが、ガイドラインでは、身元保証人等だからという理由だけで、本人に代わって医療行為へ同意する権限はないと整理されています。

本人が意思表示できない場合はどうする?

判断能力が低下している場合でも、本人の残されている意思を最大限尊重することが支援の原則です。

本人の意思確認が難しい場合には、事前指示書やエンディングノート、これまで示していた本人の価値観や意向、関係者から得られる情報などを手掛かりにします。

家族等が本人の意思を推定できる場合にはその推定意思を尊重します。推定が難しい場合には、家族等がいるときは十分に話し合い、家族等がいない場合などには医療・ケアチームで、本人にとっての最善の方針を慎重に検討します。

したがって、おひとりさまにとっては「誰かに医療同意を一任する」ことではなく、「自分がどのような医療やケアを望むのか」を元気なうちに整理し、周囲と共有しておくことが実質的な備えになります。

入院費は誰が払う?保証人がいない場合のお金の備え

身元保証人がいなくても、入院費について本人が負担すべき費用そのものがなくなるわけではありません。

課題となるのは、「本人が負担する費用を、入院中にどう支払える状態にしておくか」です。

本人が意識清明で動ける間は問題ありませんが、体調悪化で銀行に行けなくなったり認知機能が衰えたりすると、窓口手続が滞るリスクがあります。

元気なうちにできる備えとして、利用している金融機関に代理人制度等があるかを確認しておくことや、判断能力があるうちから事務を託す「財産管理等委任契約」、将来の判断能力低下に備える「任意後見契約」(※任意後見契約は公正証書によって締結する必要があり、家庭裁判所が任意後見監督人を選任したときから効力が生じます)の検討が挙げられます。

退院するときは誰が動く?「入院できた後」も考えておく

入院時の手続きだけでなく、おひとりさまの場合は「退院時の受け入れ体制」も重要になります。

ガイドラインでも、退院支援は医療機関が求める機能の一つに位置づけられています。これらは家族一人に頼るのではなく、医師・看護師、医療ソーシャルワーカー、ケアマネジャー、地域包括支援センターなどの福祉専門職と連携して体制を整えていくことが可能です。

もし入院中に亡くなったら、誰が対応する?

病院側が懸念する事項の一つに、死亡時の対応があります。病院が死亡後のすべての手続きを代行してくれるわけではありません。

元気なうちに「死後事務委任契約」を結び、必要な事務を契約内容として定めておくことで、

といった死後の事務手続きを、信頼できる受任者に託すことができます。

(※民法653条1号では、委任者または受任者の死亡は委任の終了事由とされています。一方、最高裁平成4年9月22日判決は、自己の死後の事務を含む委任契約について、委任者の死亡によっても契約を終了させない旨の合意の効力を認めています。そのため、死後事務委任契約では、死亡後も契約を存続させる旨を契約内容として明確にしておくことが重要です。)

おひとりさまが元気なうちに整理しておきたい備え

身元保証人を一人探してすべてを背負わせるのではなく、病院が求める機能を分解し、適切な制度や窓口を割り当てておくことが現実的な解決策です。

病院側が確認したいこと

困りやすい場面

元気なうちに検討できる備え

①緊急時の連絡

急変時に連絡先がない

信頼できる知人、見守り契約等の受任者

②入院費等の支払い

本人が銀行窓口で手続できない

金融機関の代理人制度等、財産管理等委任契約

③医療に関する本人の意思

意思表示が難しくなった

ACP(人生会議)、事前指示書、リビングウィル

④退院・転院の調整

自宅療養や施設入所の調整が必要

MSW、ケアマネジャー、地域包括支援センター等との連携

⑤死亡時の対応

遺体引き取りや部屋の整理を頼めない

死後事務委任契約、(必要に応じて)遺言書

身元保証等の民間サービスを利用するときに確認したいこと

頼れる親族がいない場合、身元保証や日常生活支援、死後事務を提供する民間事業者を利用する選択肢もあります。

これは前段で整理した「必要な役割」の複数を、専門の事業者に委託する仕組みといえます。

ただし、「まとめて任せられる会社があるから安心」と、内容を吟味しないまま一任してしまうと、前述の「必要な役割ごとに備える」という視点が見落とされがちになります。

現在、政府の関係省庁は、こうしたサービスを「高齢者等終身サポート事業」と整理し、事業者向けガイドラインや利用者向けの注意点を公表しています。

利用を検討する際は、以下の点を入念に確認することが不可欠です。

契約を結ぶ前に、書面の条項を一つひとつ確認し、疑問点を解消した上で判断してください。

まとめ|必要なのは「保証人探し」ではなく、役割ごとの備え

入院による治療が必要であるにもかかわらず、身元保証人がいないことのみを理由に入院を拒否することは認められていません。

しかし、現場で求められる

といった個々の役割に対する備えは必要です。

おひとりさまの入院対策とは、すべてを引き受けてくれる保証人を無理に探すことではなく、自分に必要な役割を切り分け、どの部分に備えが不足しているかを元気なうちに把握することから始まります。

ここまで整理してみて

「自分にはどの備えが必要なのか分からない」
「一部は知人に頼めても、それ以外を任せられる人がいない」

という場合には、制度を先に選ぶのではなく、まず不足している役割を整理する方法があります。

ご相談について

当事務所では、「身元保証人を探すこと」だけを目的にするのではなく、入院・退院・財産管理・医療への希望・死亡後の手続までを含め、現在どの部分に備えが必要なのかを客観的に整理します。

「頼れる家族がいないため、突然の入院にどう備えるべきか知りたい」

「緊急連絡先は頼めるが、金銭管理や死後のことまでは頼めない」

「入院時だけでなく、万が一の亡くなった後のことまで一通り準備しておきたい」

初回相談では、特定の契約締結を前提とせず
「いつ」「誰に」「何を頼む必要があるのか」を状況に合わせて整理します。

必要に応じて、見守り契約、財産管理等委任契約、任意後見契約、死後事務委任契約などの選択肢を検討していきます。

また、身元保証等の民間サービスを検討している場合には、契約締結に向けて、サービス内容、費用、解約・返金条件、預託金の管理方法など、確認しておきたい契約条項の整理や、必要な契約書等の作成に関するご相談をお受けします。

なお、個別の法的紛争や、行政書士の業務範囲を超える法律判断が必要な場合には、弁護士等の適切な専門家をご案内します。

【参照】
・「身元保証人等がいないことのみを理由に医療機関において入院を拒否することについて」(医政医発0427第2号)(厚生労働省)
・「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」(厚生労働省)
・高齢者等終身サポート事業者ガイドライン(法務省)

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本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的判断を保証するものではありません。ご自身の状況に応じた具体的な検討については、行政書士等の専門家にご相談ください。

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