千葉の終活相談|任意後見・死後事務委任・遺言

許認可関係はこちら

成年後見制度改正2026|後見・保佐はどう変わる?

【2026年9月現在の注意点】
本記事で解説する成年後見制度の改正(民法等の一部を改正する法律・令和8年法律第45号、2026年6月17日成立/同月24日公布)は成立・公布されていますが、まだ施行されていません。
施行日は、公布の日から起算して2年6か月を超えない範囲内において政令で定める日とされています。遅くとも2028年12月までに施行される見込みですが、2026年9月現在、具体的な施行日は決まっていません。

そのため、現行の成年後見制度(後見・保佐・補助の3類型)が適用されています。(最終更新日:2026年9月14日)


認知症や病気などにより判断能力が低下した方の権利や生活を法的に支援する「成年後見制度」が、大きく見直されることになりました。

法改正により、次のような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

この記事では、2026年に成立した成年後見制度改正について、後見・保佐の廃止と補助への一元化、制度利用終了の見直し、任意後見制度の変更点を整理したうえで、施行前の現行制度のもとで「今できる備え」を行政書士の視点から分かりやすく解説します。

2026年に成年後見制度の改正法が成立した背景

2026年6月、成年後見制度の抜本的な見直しを含む民法等の改正法が成立しました。従来の制度、特に後見・保佐については、実務上、次のような課題が指摘されてきました。

必要性がなくなっても終了しにくい:
現行の後見・保佐では、制度を利用するきっかけとなった問題が解決しても、本人の判断能力が回復しない限り、原則として制度の利用を終了できません。

本人に必要な範囲を超えて権限が及ぶ場合がある:
後見では成年後見人に広範な代理権・取消権が認められるため、本人に必要な支援の範囲を超えて自己決定が制約される場合があります。

また、制度の利用が長期間に及び、専門職が後見人等に選任され、家庭裁判所による報酬付与の審判がされた場合には、本人の財産から継続的に報酬が支払われることもあります(※成年後見人等が本人の財産から報酬を受け取るには家庭裁判所の審判が必要なため、必ず専門職報酬が発生するわけではありません)。

今回の改正は、こうした課題を踏まえ、本人の意思や自己決定をできる限り尊重し、真に必要な範囲で柔軟に支援を受けられる仕組みへ見直すことを目的としています。

現行制度と法改正の3つのポイント

現在の法定後見制度は、本人の判断能力の程度に応じて3つの類型に分かれています。

類型

主な対象
(判断能力の程度)

支援者の主な権限

後見

判断能力を欠いているのが通常の状態

成年後見人に広範な代理権・取消権

保佐

判断能力が著しく不十分な状態

重要な財産上の行為について同意権・取消権など

補助

判断能力が不十分な状態

家庭裁判所が個別に範囲を定める特定の法律行為について代理権・同意権など

今回の改正では、この仕組みが大きく次の3つの方向で見直されます。

1. 後見・保佐を廃止し「補助」へ一元化

最大の変更点は、現在の「後見」と「保佐」を廃止し、法定後見制度を「補助」へ一元化することです。
判断能力の程度だけで画一的に振り分けるのではなく、本人が実際にどのような法的支援を必要としているのかを重視する仕組みに変わります。

個別の権限設定:
「定期預金の解約など特定の法律行為だけ代理してほしい」
「重要な契約についてのみ同意を必要としたい」など、
具体的な必要性に応じて権限を定めます。

本人の自己決定権の尊重:
本人自身で判断できる事項にまで、一律に補助人が関与することはありません。

重度の判断能力低下への対応:
判断能力を欠く常況にある方への保護がなくなるわけではなく、必要に応じて「特定補助人」を付し、重要な財産上の行為などについて取消権を認める仕組みが設けられます。なお、特定補助人を付する旨の審判については、原則として本人の精神の状況について鑑定が必要とされます。ただし、医師2名以上の意見を聴いたうえで、鑑定が明らかに不要と認められる場合には、鑑定を行わずに審判することができます。

2. 必要がなくなれば「制度利用を終了できる仕組み」へ

今回の改正で特に重要なのが、制度利用を終了する仕組みの見直しです。現行の後見・保佐では、問題が解決したとしても、本人の判断能力が回復しない限り、原則として利用を終了できません。

これに対し改正後は、家庭裁判所が「支援の必要がなくなった」と認めた場合に、補助制度の利用を終了することができる仕組みが設けられます。

補助人は原則として年1回、本人の状況などを家庭裁判所へ報告することとされ、その内容等から利用要件がなくなったと認められる場合には、裁判所が職権で補助開始の審判等を取り消す仕組みも導入されます。

「判断能力が回復したか」だけでなく、「現在もその法的支援が必要なのか」という実質的な観点から見直せるようになります(※あらかじめ「3年間だけ」と区切る画一的な有期制度になるわけではありません)。

3. 任意後見制度の利便性向上

判断能力が十分にあるうちに、将来支援してもらう人や支援内容を公正証書契約で決めておく「任意後見制度」も見直されます。

任意後見開始の審判制度が新たに設けられるほか、家庭裁判所が「明らかに任意後見監督人による監督の必要がない」と認める場合には、任意後見監督人を選任しないことができる仕組みが導入されます。また、補助(法定後見)の利用を開始しても任意後見契約が終了せず、両制度の併用が可能になります。

【注意】改正後も任意後見監督人が原則不要になるわけではありません
監督人を選任しないことができるのは、家庭裁判所が「明らかに監督の必要がない」と認めた例外的な場合に限られます。すべてのケースで監督人費用が不要になるわけではありません。
なお、現時点では、任意後見契約を発効させるためには裁判所による任意後見監督人の選任が必須となります。

新しい成年後見制度はいつから始まる?

成年後見制度に関する改正は、公布の日(令和8年6月24日)から起算して2年6か月を超えない範囲内において、政令で定める日から施行されます。

遅くとも2028年12月までには施行される見込みですが、2026年9月現在、具体的な施行日は決まっていません。施行されるまでは、現在の「後見・保佐・補助」の3類型による制度がそのまま適用されます。

法改正を待つ?今動く?現在の状況から考える

「新しい制度の方が柔軟なら、それまで待った方がいいのでは?」と思われるかもしれません。しかし、新制度が施行されるまでの間に、本人の健康状態や判断能力が変化する可能性もあります。

重要なのは、「今の本人の状態において、どのような対応を検討できるか」という視点です。

現在の状況

検討の方向性

すでに本人の意思確認が難しく、預金の払戻しや必要な契約などに支障が出ている

【早めの対応を検討】
新制度の施行を待つことが適切でない場合もあります。現行の法定後見制度の利用について、司法書士・弁護士等への相談を検討します。

判断能力はあるが、病気や身体機能の低下で銀行・役所等の手続が負担になっている

【他の制度で対応を検討できる】
財産管理等委任契約によって、一定の財産管理や事務を第三者へ委任する方法があります。

現在は元気だが、将来の認知症などに備えたい

【今から備えを検討できる】
任意後見契約や見守り契約など、本人自身が将来の支援者や支援内容を決める方法があります。

差し迫った課題はなく、制度について情報収集している段階

【経過を見守る】
財産状況や連絡先、将来希望する支援などを整理しながら、今後の施行動向を確認する方法があります。

たとえば、判断能力はあるが、病気や身体機能の低下で銀行・役所等の手続が負担になっている場合には、財産管理等委任契約が選択肢になります。

【実務上のポイント】財産管理等委任契約と金融機関の対応について
財産管理等委任契約を結んでいても、すべての金融機関で当然に代理取引が認められるとは限りません。金融機関ごとに独自の代理人制度や所定の委任状が定められている場合があります。
当事務所では、契約書を作成する前に、将来利用を想定している主要な金融機関の取扱いを確認しながら条項を設計するサポートを行っています。

判断能力があるうちだからこそ検討できる生前対策

特に注意したいのは、「将来に備えたいけれど、今はまだ元気だから急がなくてもよい」と考えている場合です。

任意後見契約や財産管理等委任契約は、本人が契約内容やその結果を理解し、自分の意思で契約できることが前提となります。

そのため、施行を待っている間に判断能力が低下し、契約の内容やその結果を理解したうえで意思表示することができない状態になると、任意後見契約や財産管理等委任契約を新たに有効に締結することが難しくなります。

認知症の診断を受けているかどうかだけで決まるものではなく、契約時の本人の意思能力が重要です。

「待っている間に選べる選択肢が狭まってしまう」可能性を避けるためにも、元気なうちからどのような備えができるかを確認しておくことには大きな意味があります。

本人の意思を尊重した生前対策を、選択肢があるうちに

成年後見制度の改正によって法定後見制度は本人に必要な範囲でより柔軟に利用できる方向へ変わりますが、現在抱えている生活上の問題が新制度の施行まで待ってくれるわけではありません。

当事務所では、現在の生活状況や将来の希望を丁寧に伺いながら、任意後見契約、財産管理等委任契約、見守り契約、死後事務委任契約など、行政書士として対応できる生前・死後の備えについて整理するご相談を承っています。

当事務所でサポートできること

見守り契約:
定期的な面談や連絡を通じて生活状況や安否を確認し、必要に応じて適切な支援につなげます。

財産管理等委任契約:
契約で定めた範囲の財産管理や各種事務を第三者へ委任する仕組みです(※金融機関での代理取引については、各金融機関の取扱いを確認する必要があります)。

任意後見契約:
将来判断能力が低下した場合に備え、あらかじめ信頼できる支援者と支援内容を決めておきます。任意後見契約は法律上、公正証書で締結する必要があります。

死後事務委任契約:
葬儀、納骨、関係先への連絡、各種契約の解約など、亡くなった後に希望する事務をあらかじめ整理します。

ご相談の段階では、確定した財産目録や医師の診断書などがなくても構いません。

「親の物忘れが少し気になり始めた」
「法改正を待った方がよいのかわからない」
「任意後見と財産管理等委任契約の違いがわからない」

といった段階からご相談いただけます。

ご家族のみでのご相談も可能ですが、実際に任意後見契約や財産管理等委任契約などを締結する際には、ご本人の意思確認が必要です。

法定後見が必要となる場合について

当事務所では、成年後見制度に関する一般的なご相談や、任意後見契約、財産管理等委任契約、見守り契約などの生前対策についてのご相談を承っています。ただし、家庭裁判所への申立代理や裁判所提出書類の作成など、行政書士の業務範囲外となる手続には対応していません。

成年後見に関するご相談では、ご本人や関係者から、ご本人の心身の状態、生活状況、財産状況やご希望などを伺い、行政書士として対応できる範囲で、利用できる制度や生前対策について整理します。

すでに判断能力が低下しており、法定後見の申立てを検討する必要があると考えられる場合には、必要に応じて司法書士・弁護士等の適切な専門家への相談をご案内します。

新制度の施行を待つかどうかではなく、現在どのような選択肢が残されているのかを確認するところから始めてみてはいかがでしょうか。


【参考】
「民法等の一部を改正する法律」(成年後見及び遺言の制度の見直し)について(令和8年6月30日)(法務省)

【関連記事】

「死後事務委任契約でできること・できないこと」

「任意後見と死後事務委任の違い」

「見守り契約とは?ひとり暮らしの老後で考えたい『任意後見が始まる前』の備え」

「認知症になると銀行口座は『凍結』される?家族が引き出せない理由と元気なうちの備え」


本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的判断を保証するものではありません。ご自身の状況に応じた具体的な検討については、行政書士、司法書士、弁護士等の適切な専門家にご相談ください。

コラムトップへ