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相続人がいない人の財産はどうなる?相続財産清算人・特別縁故者・国庫帰属までの流れと期間

「自分には配偶者も子どももいない。親も兄弟姉妹もすでに亡くなっている」

このような場合、

「自分が亡くなったら、財産はそのまま国のものになるのだろうか」

と疑問に思う方もいるでしょう。

結論から言うと、相続人がいない場合でも、亡くなった時点ですぐに財産が国庫へ帰属するわけではありません。相続人がいないことが確定するまでには、相続財産清算人の選任後、最短でも6か月を要します。その後も特別縁故者による財産分与の申立期間が3か月設けられており、財産の換価や債権者への支払いなどの状況によっては、国庫への引継ぎまでさらに時間を要します。

「相続人がいない=すぐ国のものになる」と単純に考えるのではなく、その前にどのような手続があり、どれくらいの期間がかかるのかを知っておきましょう。

「相続人がいない」とはどのような場合?

「相続人がいない」というのは、最初から法定相続人となる親族がいない場合だけではありません。

たとえば、配偶者がおらず、子やその代襲相続人、父母・祖父母などの直系尊属、兄弟姉妹やその代襲相続人である甥・姪もいない場合です。

また、本来相続人となる親族がいても、その全員が相続放棄をした結果、相続する人がいなくなることもあります。

このように相続する人がいない場合には、相続財産を管理・清算するため、家庭裁判所への申立てによって相続財産清算人が選任されることがあります。

なお、子どもがいない場合に誰が法定相続人になるのかについては、別記事「子どもがいない人の相続人は誰?兄弟姉妹や甥・姪まで確認しておきたい理由」で詳しく解説しています。

相続財産清算人とは?

相続財産清算人とは、相続人がいない場合などに、亡くなった方の財産を管理・清算するために家庭裁判所が選任する人です。

といった財産や負債を確認し、法律に従って清算を進めます。必要がある場合には、家庭裁判所の許可を得て不動産や株式などを売却し、金銭に換えることもあります。

相続財産清算人になるための特別な資格は法律上必要とされていませんが、家庭裁判所が被相続人との関係や利害関係などを考慮して適任者を選びます。弁護士や司法書士などの専門職が選任されることもあります。

相続財産清算人は死亡によって自動的に選任されるものではなく、被相続人の債権者、特定遺贈を受けた人、特別縁故者などの利害関係人や検察官から、家庭裁判所への申立てが必要です。そのため、「相続人がいなければ自動的に公的機関がすべて処理してくれる」という制度ではありません。

相続財産清算人の選任では「予納金」が必要になる場合があります

相続財産清算人の選任申立てには、収入印紙800円分、官報公告料5,582円がかかります(裁判所の指示があってから納付)。このほか連絡用の郵便切手代が必要ですが、こちらは家庭裁判所ごとに金額が異なります。

さらに、相続財産の内容から、清算人が財産を管理・清算するための費用や報酬を相続財産から十分に支払えない可能性がある場合には、申立人に対して相当額の予納金の納付を求められることがあります。相続財産から管理費用や清算人の報酬等を十分に賄える見込みがある場合には、予納金を求められないこともあり、常に高額な予納金が必要というわけではありません。

予納金の額は、相続財産の内容や清算に必要な事務などによって家庭裁判所が個別に判断するため、全国一律ではありません。具体的な金額については、申立先の家庭裁判所の案内を確認する必要があります(なお、予納金に余剰が生じた場合は、清算後に申立人へ還付されることがあります)。

事案によっては申立人に予納金の納付が求められる場合もある、という点は、生前に対策を考えておくべき理由の一つといえるでしょう。

相続人がいないことが確定するまで最短6か月

相続財産清算人が選任されると、次の二つの手続が並行して進みます。

公告の種類

期間

内容

①選任・相続人捜索の公告

6か月以上

家庭裁判所が、清算人を選任したこと、および相続人がいるなら申し出るよう公告する

②債権者・受遺者への請求申出の公告

2か月以上(①の期間内に完了)

相続財産清算人が、亡くなった方に対して債権を持つ人や、遺言で財産を受け取る受遺者に対して申し出るよう公告する

②は①の期間の中で並行して行われ、①の期間内に満了する必要があります。①の期間内に相続人として権利を主張する人が現れなければ、その時点で相続人がいないことが確定します。

令和3年民法改正(令和5年4月1日施行)では、旧制度で順番に行っていた3段階の公告手続を整理し、選任・相続人捜索公告と債権者等への公告を並行して行えるようにしたことで、権利関係の確定に最低必要な期間が10か月から6か月へ短縮されました。

ただし、これはあくまで「相続人がいないことが確定するまで」の最低期間です。相続財産の調査・換価や債権者等への支払いは公告手続と並行して進められることがありますが、その後も特別縁故者への財産分与の申立期間があり、財産分与の有無や清算状況によっては、国庫への引継ぎまでさらに時間を要します。

相続人がいなければ、特別縁故者が財産分与を申し立てられる場合がある

相続人を捜す公告の期間が満了し、相続人がいないことが確定した後には、亡くなった方と特別な縁故があった人が、家庭裁判所へ相続財産の分与を申し立てることができます。

申立期間は、相続人を捜す公告で定められた期間の満了後3か月以内です。

ただし、申し立てれば必ず財産を受け取れるわけではありません。家庭裁判所が事情を確認し、「相当」と認めた場合に、清算後に残った相続財産の全部または一部が分与されます。

「特別縁故者」とは?財産を必ず受け取れるわけではありません

特別縁故者として財産分与を申し立てることができる人として、裁判所は次のような人を挙げています。

たとえば、亡くなった方と長年生活を共にし、生計を同じくしていた内縁・事実婚のパートナーなどが問題となる場合があります。

ただし、

「内縁のパートナーだから当然に特別縁故者になる」 「長年の友人だから財産を受け取れる」

という制度ではありません。亡くなった方との関係、生計の状況、療養看護の状況などを踏まえて、家庭裁判所が個別に判断します。

また、特別縁故者への財産分与は、法定相続人ではない人について、相続人不存在の場合に一定の要件のもとで財産分与を認める、法定相続とは別の制度です。

終活の観点で特に重要なのがこの点です。

「長年一緒に暮らしてきた事実婚のパートナーがいる」「自分をずっと支えてくれた友人がいる」という場合でも、「相続人がいなければ、最終的にその人へ財産が渡るだろう」と考えるのは危険です。

特別縁故者への財産分与を受けるためには、相続人不存在の手続を経たうえで、期間内に家庭裁判所へ申し立てる必要があり、分与するかどうか、全部か一部かは家庭裁判所が個別に判断します。

特別縁故者制度は、本人が希望する相手に財産を残すことをあらかじめ確保するための制度ではありません。 自分の意思で特定の人や法人に財産を残したいのであれば、特別縁故者制度に期待するのではなく、生前にそのための方法(後述)を検討しておくことが重要です。

最終的に残った財産は「国庫」に帰属します

相続財産清算人による清算が行われ、債権者や受遺者への支払い、特別縁故者への財産分与などを経てもなお相続財産が残っている場合には、残った財産は原則として国庫に帰属します。

「相続人がいない人の財産は国のものになる」という説明は最終的な結果としては間違いではありませんが、死亡と同時に自動的に国へ移るわけではなく、ここまで説明してきた清算手続を経た後の話です。

※共有不動産がある場合の例外
相続財産に不動産などの「共有持分」が含まれる場合には例外があります。相続人不存在の手続や特別縁故者への財産分与を経ても共有持分の承継者がいない場合には、民法の規定により、その持分が他の共有者に帰属することがあります。そのため、すべての財産について例外なく国庫へ帰属するわけではなく、一般的には「残余財産は原則として国庫に帰属する」と理解するのが適切です。

手続の全体像|法律上最低限必要な期間

段階

法律・裁判所上の期間

相続財産清算人の選任

審理期間は事案・裁判所による

選任・相続人捜索の公告

6か月以上

債権者・受遺者への公告

2か月以上(上記6か月の期間内に満了)

特別縁故者への財産分与の申立て

相続人捜索公告の期間満了後3か月以内

財産分与・国庫への引継ぎ

財産の内容・清算状況等による

※ここに示したのは法律上最低限必要な期間であり、平均的な処理期間を示すものではありません。実際の所要期間は事案や家庭裁判所の判断により異なります。

残したい相手がいるなら、生前に考えておくことが大切です

相続人がいない方にとって重要なのは、「自分が亡くなった後に法律上どう処理されるか」だけでなく、「自分は財産をどうしたいのか」を生前に考えておくことです。

「長年支えてくれた友人に財産を残したい」
「事実婚のパートナーに住まいや預貯金を残したい」
「お世話になった法人や団体に財産を遺したい」
という希望がある場合には、遺言による遺贈など、自分の意思を法的な形で残す方法を検討します。

特別縁故者への財産分与は、本人が生前に財産の行き先を指定する制度ではありません。そのため、

  1. 本当に法定相続人となる人がいないのか確認する

  2. 自分の財産を把握する

  3. 誰にどの財産を残したいのか考える

  4. 必要に応じて遺言などの方法を検討する

という順序で整理しておくことが大切です。遺言書作成についての基本は「自筆証書遺言と公正証書遺言、どちらを選ぶ?」でも解説していますので、あわせてご覧ください。死後の手続をあらかじめ第三者に託しておきたい場合は「死後事務委任契約でできること・できないこと」もご参照ください。

当事務所でお手伝いできること

行政書士は、戸籍謄本等を収集して法定相続人の範囲を確認し、相続関係説明図としてまとめる業務を行うことができます。遺言書作成のご相談にあたっては、この相続人調査もあわせて承っております。

一方で、相続財産清算人の選任申立てや特別縁故者への財産分与は、家庭裁判所における手続です。申立人の代理人として家庭裁判所の手続を行うことは弁護士の業務となり、司法書士は裁判所へ提出する申立書等の書類作成を業務として行うことができます。当事務所では、その前段階である財産の把握・整理や、生前の遺言書作成支援を中心に、必要に応じて連携する専門家をご紹介する形でサポートしています。

「自分に相続人がいるかどうか分からず不安」「特定の人に財産を残したい」という方は、まずはお気軽にご相談ください。

まとめ
「相続人がいない=すぐ国庫」ではなく、時間のかかる手続です

相続人がいない場合でも、亡くなった直後に財産がそのまま国庫へ帰属するわけではありません。

相続財産清算人の選任(利害関係人または検察官の申立てが必要)
↓
選任・相続人捜索の公告と債権者・受遺者への公告(並行して最短6か月)
↓
特別縁故者への財産分与の可能性(公告満了後3か月以内に申立て)
↓
残った財産が原則として国庫へ帰属

という流れで、相続人がいないことが確定するまでには最短でも6か月、その後の特別縁故者の申立期間や清算状況によってはさらに時間を要します。

また、特別縁故者への財産分与は、本人が希望した相手への財産承継を保証する制度ではありません。特定の人や法人に財産を残したいという希望がある場合には、生前に法定相続人の有無を確認し、遺言などによって意思を残しておくことが重要です。

【参考】
◆「相続財産清算人の選任」(裁判所)
◆「特別縁故者に対する相続財産分与」(裁判所)
◆ 令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」(法務省)


本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案について法的判断を示すものではありません。相続財産清算人の選任や特別縁故者への財産分与は家庭裁判所における手続です。実際にこれらの申立てが必要となった場合には、手続の内容に応じて弁護士・司法書士等の適切な専門家への相談をご検討ください。

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