ソラノイロ行政書士事務所
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自筆証書遺言と公正証書遺言の違いを、費用・証人・検認・無効リスクという4つの視点から整理。法務局の自筆証書遺言書保管制度の仕組みと限界も解説します。
「遺言を書こう」と思ったとき、まず迷いやすいのが、自分で作成するのか、公証人に公正証書として作成してもらうのかという点です。
一般に利用されることが多いのが、自筆証書遺言と公正証書遺言です(このほかに秘密証書遺言という方式もありますが、実務上の利用は多くありません)。
なお、2025年10月1日に施行された改正公証人法により、公正証書は原則として電磁的記録(PDF)で作成され、その原本は日本公証人連合会が運営するシステム内で保存される仕組みに変わりました。あわせて、一定の要件を満たし、公証人が相当と認めた場合には、Web会議を利用したリモート方式による作成も可能になっています。ただし、公正証書遺言についてリモート方式を利用するには、本人確認や遺言をする意思の確認に支障がないことなどが必要です。

自筆証書遺言は、民法が定める方式に従って本人が作成します。一方、公正証書遺言は、公証人が関与して作成します。
両者の違いは「作成の主体」だけではありません。証人の要否、家庭裁判所での検認手続の要否、費用、方式不備による無効リスクなど、実務上の負担やリスクの所在が異なります。次の項目で、選ぶ際の具体的な視点を整理します。
「どちらが優れているか」ではなく、「ご自身の状況にどちらが合うか」で考えることが大切です。代表的な視点は次の4つです。
① 証人の要否
公正証書遺言の作成には証人2名以上の立会いが必要です。未成年者、推定相続人・受遺者およびこれらの配偶者・直系血族などは証人になれません(民法974条)。
自筆証書遺言には証人は不要です。
② 検認の要否
自筆証書遺言は、原則として相続開始後に家庭裁判所での検認手続が必要です(民法1004条1項)。公正証書遺言は、検認は不要です(民法1004条2項)。なお、自筆証書遺言でも、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用した場合は、遺言書保管法11条により検認が不要になります。
なお、検認は遺言書の状態や内容を確認し、偽造・変造を防止するための手続であり、遺言そのものの有効・無効を判断する手続ではありません。この点は裁判所のホームページでも明示されています。
③ 費用
自筆証書遺言は自分で作成する分には用紙代のみで作成できます(保管制度を利用する場合は申請時に手数料3,900円)。公正証書遺言では、公証人手数料令に基づき、財産を受け取る方ごとの財産価額などに応じて手数料が算定されます。このほか、遺言加算や、公正証書の内容を証明するもの(従来の正本・謄本に相当するもの)の交付費用などが生じる場合があります(令和7年10月の政令改正で手数料体系が見直されています)。
具体的な金額は財産の内容によって異なるため、日本公証人連合会のページでのご確認をおすすめします。
④ 方式不備による無効リスク
自筆証書遺言は、日付の記載方法や署名など、民法で定められた方式を欠くと無効になる可能性があります。公正証書遺言は公証人が要件を確認しながら作成するため、方式不備による無効リスクは低くなります。
ただし、公正証書遺言であっても、遺言能力など遺言の実質的な有効性に関する問題まで当然に解消されるわけではありません。民法は「遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない」と定めており(民法963条)、遺言能力を欠く状態で作成された遺言は、方式が整っていても無効となり得ます。
自宅で遺言書を保管すると、「見つけてもらえない」「紛失してしまう」といった問題があります。そこで利用できるのが「自筆証書遺言書保管制度」です。本人が法務局の遺言書保管所へ自筆証書遺言を預ける制度で、原本は死亡後50年、画像データは150年にわたって管理されます。死亡後には、一定の関係者が遺言書情報証明書の交付などを請求できます。
この制度を利用すると、家庭裁判所での検認が不要になるほか、預ける際に法務局職員が日付・署名など外形的な方式を確認するため、外形的な方式不備に気づきやすくなります。
ただし、ここは誤解されやすい点ですが、法務局が確認するのはあくまで方式(形式面)であり、遺言の内容そのものの有効性や、ご本人の意図どおりに実現できるかどうかまでは審査されません。 内容面の検討は、この制度を利用する場合でも別途必要です。

自筆証書遺言には自分で作成しやすいという特徴があります。一方、公正証書遺言では公証人が関与するため、方式面での安心感があります。
ただし、重要なのは遺言の方式だけではありません。財産の内容、相続人となる方の範囲、遺留分、受遺者、遺言執行者など、遺言の前提となる事実関係や検討事項を整理したうえで、それを文案にどう反映するかが重要になります。形式だけ整っていても、実現したかった内容と異なる遺言になってしまえば意味がありません。
行政書士は、こうした事実関係の整理をふまえた遺言書文案の作成支援を行うことができます。一方、相続人間ですでに具体的な紛争が生じている場合や、紛争について法律相談や相手方との交渉等が必要となる場合には、弁護士への相談をご案内します。 また、登記手続や税務上の判断が必要となる場合には、司法書士・税理士など他の専門家と連携することがあります。
※本記事は2026年8月現在の法令・制度に基づいています。2026年6月に公布された民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)により、押印の任意化(公布から1年を超えない範囲内で施行)や、保管証書遺言の創設等(公布から3年を超えない範囲内で施行)など、今後、遺言の方式等が変更される予定です。
【参考】
◆自筆証書遺言書保管制度(法務省)
◆民法963条(遺言能力)・974条(証人の欠格事由)・1004条(検認)(e-GOV法令検索)
◆公正証書遺言の手数料(日本公証人連合会)
◆遺言書保管法11条(検認の適用除外)(e-GOV法令検索)
◆公正証書のデジタル化・リモート方式(2025年10月施行)(日本公証人連合会)
◆遺言書の検認とは(裁判所)
◆民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)の概要(法務省)
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的判断を示すものではありません。ご自身の状況に応じた具体的な検討については、行政書士等の専門家にご相談ください。