ソラノイロ行政書士事務所
千葉の終活相談|任意後見・死後事務委任・遺言
最終確認日:2026年10月13日
「将来、認知症などで自分の判断が難しくなったとき、誰に財産管理や手続きを頼めばよいのだろう」
「子どもがいないし、親族にも負担をかけたくない。家族以外にお願いすることはできる?」
任意後見人は、家族や親族以外にも頼むことができます。
友人・知人、専門家、法人なども候補になります。
ただし、相手が引き受けてくれることに加え、法律上の条件を満たす必要があります。
また、任意後見は契約を結んだからといって、必ず将来の支援が始まるわけではありません。
誰に頼むかだけでなく、どのような仕事を任せるか、いつ支援を始めるかも考えておきたいところです。
このコラムでは、任意後見人になってくれる人の探し方、候補者を比較するポイント、契約前に確認したいことを解説します。

任意後見制度は、将来、認知症などによって判断能力が不十分になった場合に備え、あらかじめ支援してもらう相手と仕事内容を契約で決めておく制度です。
将来、任意後見人になってもらう契約相手を「任意後見受任者」といいます。
任意後見が開始すると、契約で定めた代理権の範囲で、預貯金の管理や介護サービス・施設入所の契約などを任せることができます。
一方、掃除や買い物などの日常的な世話を任意後見人が自ら行うことは、当然の仕事に含まれるわけではありません。
任意後見受任者は、必ず家族や親族から選ばなければならないわけでありません。
例えば、次のような相手が考えられます。
友人・知人:普段から本人の生活や考え方を知っている人
専門家:任意後見の受任に対応している弁護士、司法書士、行政書士、社会福祉士など
法人:任意後見業務を取り扱う社会福祉法人、NPO法人など
ただし、本人が希望しても、相手に引き受ける義務が生じるわけではありません。
任意後見契約に関する法律第4条第1項第3号では、任意後見受任者について、例えば次のような事情がある場合を定めています。
未成年者
過去に家庭裁判所で法定代理人、保佐人、補助人を解任されたことがある
破産者である
行方がわからない
本人に対して訴訟をしたことがあるなど、法律で定める利害関係がある不正な行為や著しい不行跡など、任意後見人の任務に適さない事情がある
これらは法律上の事由をわかりやすく例示したもので、すべてを列挙したものではありません。
任意後見契約を結べたとしても、任意後見受任者にこうした事由がある場合には、家庭裁判所による任意後見監督人の選任が認められず、任意後見を開始できません。
大切なのは、親族かどうか、専門資格があるかどうかだけでなく、法律上の条件を満たし、任せたい仕事を理解して長期的に対応できる相手かを確認することです。
任意後見制度には、名前の似た2つの立場があります。
任意後見人:本人があらかじめ選んだ相手。契約で定めた財産管理や生活に関する法律上の手続きを担当します。
任意後見監督人:家庭裁判所が選任する人。任意後見人が適切に仕事をしているかを監督します。
2026年10月11日現在の制度では、任意後見監督人が選任されることで、任意後見契約の効力が生じます。
任意後見人を自分で選べても、任意後見監督人まで自由に決められるわけではありません。
また、任意後見監督人についても、任意後見契約に関する法律第5条に欠格事由が定められています。
身近に頼める人がいない場合は、任意後見契約を取り扱う専門家に相談する方法があります。
弁護士、司法書士、行政書士、社会福祉士などの事務所や専門職団体に問い合わせ、任意後見について相談できるか確認してみましょう。
ここで区別したいのが、次の2つです。
任意後見契約の書類作成や契約準備を支援している
任意後見受任者として、実際に契約を引き受けている
契約の書類作成を支援している専門家が、必ずしも任意後見受任者を引き受けているとは限りません。
問い合わせる際は、例えば次のように伝えるとよいでしょう。
「家族以外の任意後見受任者を探しています。そちらでは、任意後見受任者としての契約も引き受けていますか?」
直接受任していない場合は、相談できる団体や窓口について情報提供を受けられるか尋ねてみる方法もあります。
なお、専門家によって対応できる業務範囲は異なります。
例えば、行政書士は、任意後見制度に関する相談、契約内容の整理、契約書の文案作成、公正証書作成に向けた公証役場との調整などを支援できます。
一方、家庭裁判所に提出する任意後見監督人選任の申立書の作成や、裁判手続の代理は、行政書士の資格に基づいて取り扱える業務ではありません。
家庭裁判所への申立書作成については司法書士、裁判手続の代理については弁護士など、対応できる専門家に相談することになります。本人が自ら申し立てる方法もあります。
契約準備の相談と、将来の家庭裁判所での手続きは分けて考えておきましょう。
社会福祉法人やNPO法人など、法人が任意後見契約の相手になる方法もあります。
法人の場合は、契約相手の法人と実際に対応する担当者が異なるため、次のような点を確認しましょう。
日常の相談窓口は誰か
担当者が退職・異動した場合、誰が引き継ぐか
財産管理の記録や報告はどのように行われるか
法人が業務を継続できなくなった場合はどうなるか
法人だから支援が途切れないと決まっているわけではありません。
受任実績の有無だけでなく、現在の受任方針や継続体制について説明を受けましょう。
どの専門家に相談すればよいかわからない場合は、地域の成年後見に関する相談窓口を利用する方法もあります。市町村によっては、成年後見支援センターがある場合もあります。
ただし、制度について相談できることと、任意後見受任者を紹介・あっせんしてもらえることは同じではありません。
具体的にどこまで相談できるかは、事前に確認してください。
なお、自治体などが育成に取り組む「市民後見人」の仕組みもありますが、希望すれば任意後見受任者を必ず紹介してもらえる制度ではありません。
候補者が見つかったら、すぐに契約するのではなく、具体的な支援の内容を確認しましょう。
任意後見人に任せる仕事は、本人と相手が合意した契約内容によって決まります。
例えば、預貯金の管理、公共料金の支払い、介護サービスの契約、施設入所の手続きなどです。
「財産管理をお願いします」と伝えるだけでなく、どこまで対応してほしいのかを具体的に相談しましょう。
また、任意後見は法律上の代理権を利用する制度です。任意後見契約によって、手術などの医療行為への同意権が当然に与えられるわけではありません。
入院や介護に関する契約手続きと、医療行為への同意は分けて考える必要があります。
任意後見人には、本人の意思を尊重し、心身の状態や生活の状況に配慮する義務があります(任意後見契約に関する法律第6条)。
そのため、仕事内容だけでなく、どのような生活を続けたいか、どこで暮らしたいかといった希望にも耳を傾けてもらえるか確認しましょう。
本人の考えを十分に聞かず、一方的に方針を決めようとする相手であれば、慎重に判断したいところです。
任意後見人に支払う報酬は、本人と受任者の合意によって決めます。全国一律の金額があるわけではなく、無報酬とする契約もあります。
また、家庭裁判所が選任する「任意後見監督人」の報酬は別です。
その報酬は家庭裁判所が個別に決定し、本人の財産から支払われます。
費用については、少なくとも次のように分けて確認しましょう。
契約書作成や公正証書作成にかかる費用
任意後見開始前の見守りや財産管理を依頼する場合の費用
任意後見開始後の任意後見人の報酬
任意後見監督人の報酬交通費などの実費
報酬が月額なのか、特別な手続きをしたときに追加費用がかかるのかも、契約前に確認しておきたいポイントです。
任意後見では、本人の預貯金や不動産などの財産に関する事務を任せることがあります。
そのため、相手の人柄だけで判断せず、どのような方法で財産管理を行うのかを具体的に聞いておきましょう。
例えば、次のような点です。
預貯金の入出金や支出の記録をどう残すか
財産や契約に関する資料をどう保管するか
本人の利益と受任者自身の利益が対立しそうなとき、どう対応するか
任意後見開始後、監督人への報告にどう対応するか
説明が曖昧なまま契約を急がせる相手であれば、いったん検討を持ち帰ることも大切です。
任意後見は、契約を結んでから実際に支援が始まるまで、何年も経過する可能性があります。
さらに、支援開始後も長期間にわたって利用することがあります。
そのため、普段の連絡方法、活動状況の報告方法、緊急時の連絡先を確認しましょう。
特に考えておきたいのは、受任者が病気や死亡などで対応できなくなった場合です。
そのようなときに誰へ連絡するのか、新しい受任者を探す必要があるのか、契約をどう扱うのかを、あらかじめ相談しておくとよいでしょう。
なお、任意後見契約は解除できる場合がありますが、監督人が選任される前と後では法律上の条件が異なります。
監督人が選任される前は、公証人の認証を受けた書面によって解除できます。一方、選任後は正当な事由がある場合に限り、家庭裁判所の許可を受けて解除することになります。
契約した後に、いつでも自由に相手を変更できるわけではありません。
複数の専門家や法人に問い合わせても、引き受けてもらえる相手が見つからないことは考えられます。
その場合は、まず依頼したい仕事内容を整理し直してみましょう。
例えば、任意後見だけでなく、日常の安否確認や買い物の支援まで一人の相手に頼もうとしているのであれば、それぞれの役割を分けられないか考えてみる方法があります。
見守り契約は、定期的な連絡などで生活状況を確認するために利用される契約です。判断能力が低下した後に法律上の代理を行う任意後見とは、役割が異なります。
見守りについて別の相手に依頼できる場合もありますが、将来、任意後見を利用したいのであれば、引き続き契約を引き受けてくれる相手を探す必要があります。
それでも候補者が見つからない場合は、地域の成年後見に関する相談窓口などに、今後利用できる支援方法を相談してみましょう。
なお、すでに認知症などによって判断能力が低下している場合でも、診断名だけで任意後見契約を結べないと決まるわけではありません。
契約内容を理解して判断できる状態かどうかが問題となり、公証人が個別の事情を踏まえて判断します。
契約が難しい場合には、法定後見制度の利用も含めて検討することになります。
任意後見受任者になってもらう相手が決まったら、契約内容を具体的に整理します。
あらかじめまとめておきたいのは、財産の概要、希望する生活や介護、任せたい事務の範囲、報酬や連絡方法などです。
任意後見契約は、将来、本人の判断能力が不十分になった場合に備えるものです。
そのため、判断能力はあるものの、病気や身体機能の低下によって銀行や役所などの手続きが負担になってきた場合には、任意後見契約だけでは対応できません。
このような場合に備えて、財産管理等委任契約と任意後見契約を組み合わせる「移行型」という契約形態があります。
例えば、判断能力がある間は財産管理等委任契約によって必要な支援を受け、将来、判断能力が不十分になって任意後見が開始した段階で、任意後見契約による支援に移行する方法です。
実務上は、任意後見開始時に財産管理等委任契約が終了するよう、契約内容を定める方法が用いられています。
ただし、本人の判断能力が低下しただけで、自動的に任意後見へ切り替わるわけではありません。
2026年10月13日現在の制度では、家庭裁判所が任意後見監督人を選任することが必要です。
また、移行型であっても、契約を引き受けてくれる相手が必要です。受任者が見つからない問題そのものを解決できるわけではありません。
任意後見が始まる前に必要な支援を見守り契約や財産管理等委任契約で補うかどうかは、本人の生活状況や希望に応じて検討します。
任意後見が始まる前の備えについては、関連記事「見守り契約とは?ひとり暮らしの老後で考えたい『任意後見が始まる前』の備え」でも解説しています。
任意後見契約は、公証人が作成する公正証書によって結ぶ必要があります。
必要書類は、本人・受任者の本人確認書類や住民票などが基本となりますが、具体的には公証役場に確認しましょう。
日本公証人連合会の案内では、任意後見契約公正証書の作成基本手数料は、1契約13,000円です。
これに加え、登記嘱託手数料1,600円、法務局に納める収入印紙代2,600円、公正証書の正本・謄本等の作成費用や郵送費用などがかかります。
また、移行型として、財産管理等委任契約も併せて公正証書にする場合は、その委任契約について別途手数料が必要です。
専門家に契約書の作成支援などを依頼する場合には、その報酬も別途確認しましょう。
2026年10月13日現在、任意後見契約は、公正証書を作成しただけでは効力が生じません。
将来、本人の判断能力が不十分になった場合、任意後見契約が登記されていることなどの要件を踏まえ、家庭裁判所が任意後見監督人を選任することで効力が生じます。
申立てができるのは、本人、配偶者、4親等内の親族、任意後見受任者です。
本人以外が申し立てる場合には、原則として本人の同意が必要です。
ただし、本人が意思を表示できない場合は例外となります。
判断能力が低下したことに誰が気づき、誰が家庭裁判所への申立てを検討するのかも、契約前に考えておきたい点です。
申立てに必要な書類や手続きについては、管轄の家庭裁判所の案内を確認してください。
任意後見人を探すときは、次の点を押さえておきましょう。
家族・親族以外にも、友人・知人、専門家、法人などが候補になる
仕事内容、費用、本人の意思の尊重、財産管理の方法、継続体制を確認する
契約を結ぶことと、実際に任意後見が始まることは別
移行型を利用する場合も、契約を引き受ける相手が必要
将来、受任者が対応できなくなった場合や、判断能力が低下した場合への備えも考えておく
まずは「将来、自分の代わりにどんな手続きをしてほしいか」を書き出すところから始めてみてください。
候補者との面談では、次の項目を確認してみましょう。
希望する事務の範囲と対応できる内容
任意後見受任者として実際に引き受けてもらえるか
自分の生活上の希望や意思を尊重してもらえるか
契約時・開始前・開始後の費用と実費
財産管理の方法、記録や報告の体制
判断能力が低下した場合の連絡・申立てへの対応
受任を継続できなくなった場合の対応
※このチェック項目は候補者との面談に役立てるもので、法律上の適格性を判定するものではありません。

任意後見人を誰に頼むか迷っている場合は、相手を探す前に、必要な支援や契約内容を整理することから始める方法もあります。
当事務所では、任意後見を含む終活の備えについて、初回60分の無料相談を受け付けています。
任意後見契約の内容の整理、公正証書作成に向けた準備など、行政書士として対応できる範囲でサポートします。
「自分にはどんな支援が必要なのか」「任意後見だけで足りるのか」といった疑問を整理する段階でもご相談いただけます。
なお、無料相談は、任意後見受任者の紹介や直接の受任を保証するものではありません。
また、家庭裁判所への申立書作成や裁判手続の代理など、行政書士の業務範囲外の手続きは取り扱っていません。
必要に応じて、適切な専門家への相談をご案内します。
【参考資料】
「任意後見契約に関する法律」(平成11年法律第150号)(e-Gov法令検索)
「民法」第847条(e-Gov法令検索)
「行政書士法」(e-Gov法令検索)
「司法書士法」(e-Gov法令検索)
「任意後見契約」(日本公証人連合会)
「任意後見監督人選任」(裁判所)
「千葉市成年後見支援センターは、どんな支援をするところですか。」(千葉市)
「行政書士クイズ!暮らしやビジネスの困りごと解決」(日本行政書士会連合会)
「民法等の一部を改正する法律」(成年後見及び遺言の制度の見直し)について(法務省)
「民法等の一部を改正する法律案」附則第6条(衆議院)
本記事は2026年10月13日現在の制度に基づいています。
2026年6月24日に公布された「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)により、任意後見制度の開始手続や監督方法などが見直されます。
改正法の一部は公布日に施行されていますが、成年後見制度の主要な見直しは、公布の日から起算して2年6か月を超えない範囲内において、政令で定める日から施行される予定です。
改正後は、任意後見開始の審判によって契約の効力が生じる仕組みとなります。
また、家庭裁判所が明らかに任意後見監督人による監督の必要がないと認める場合には、監督人を選任せず、家庭裁判所が直接監督する仕組みも設けられます。
これらの主要な見直しは、2026年10月13日現在、施行されていません。
なお、改正法附則第6条には、改正法施行前に締結された任意後見契約についての経過措置も定められています。
改正後の規定は、施行前に締結された契約にも適用されますが、改正前の法律に基づいてすでに生じた効力は妨げられません。
また、施行前に締結された任意後見契約については、改正後の任意後見開始の審判によって効力が生じる旨の定めがあるものとみなされます。
さらに、施行前に申し立てられた任意後見監督人選任の請求で、施行前に審判が確定していないものについては、施行後、任意後見開始の審判の請求とみなされます。
したがって、改正法の施行前に契約を結んでいる場合でも、改正後の制度がどのように適用されるかは、契約の状況や手続きの進行状況によって異なります。
改正の概要については、関連記事「成年後見制度改正2026|後見・保佐はどう変わる?」をご覧ください。
※本記事は一般的な制度の説明を目的としています。個別の契約の可否や具体的な手続きは、本人の判断能力や契約内容、適用法令などによって異なります。