ソラノイロ行政書士事務所
千葉の終活相談|任意後見・死後事務委任・遺言
最終更新日:2026年10月8日
「自分には配偶者も子どももいない。財産は、疎遠な兄弟ではなくお世話になった友人やパートナーに残したい」
「何十年も付き合いのない甥・姪には、財産を渡したくない」
このようなご希望をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
独身で子がいない場合でも、ご両親が存命ならご両親に遺留分があります。
ご両親や子どもがいない場合、遺言がなければ財産は原則として兄弟姉妹(法定相続人)に渡ります。
ですが、兄弟姉妹、甥・姪には「遺留分」がありません。
相続に関することで言えば、友人やパートナーなどの相続人に該当しない人へ財産を残すには、確実な遺言方式の選択と遺言執行者の指定が推奨されます。
また、借金も引き継ぐ包括遺贈のリスクや、税金への配慮など、死後の手続きを見据えた対策が必要です。
本コラムでは、子どものいない方が遺言を作成する際の注意点や、遺留分の考え方を解説します。

「遺留分」とは、一定の相続人に法律上保障されている最低限の遺産取得割合ですが、すべての法定相続人に遺留分が認められているわけではありません。
家族構成にあてはめると、誰がどれだけの遺留分(総体的遺留分)を持つのかは以下の表のようになります。
相続人の組み合わせ | 遺留分を持つ人 | 総体的遺留分(遺産全体に対する割合) |
|---|---|---|
配偶者のみ | 配偶者 | 1/2 |
配偶者+子 | 配偶者・子 | 全体で1/2(法定相続分で按分) |
配偶者+父母 | 配偶者・父母 | 全体で1/2(法定相続分で按分) |
配偶者+兄弟姉妹 | 配偶者のみ | 1/2 |
子(代襲した孫を含む)のみ | 子 | 1/2 |
父母のみ | 父または母 | 1/3(父母両方なら各1/6) |
兄弟姉妹・甥姪のみ | なし | 0(遺留分なし) |
※注)父母・祖父母等の直系尊属は、親等が近い者が優先されます(父母が存命なら祖父母は相続人になりません)。甥・姪が相続人になるのは、兄弟姉妹が被相続人より先に亡くなっている場合に限られます。甥・姪の子には再代襲が認められません。
表のとおり、兄弟姉妹や甥・姪に遺留分はありません。したがって「財産を友人に残す」という遺言を作成しても、兄弟姉妹から友人に対して遺留分侵害額を請求されることは法律上ありません。
ここで注意すべきは、「独身で現在子どもがいないから、誰も遺留分を持っていない」とは限らない点です。
父母や祖父母が存命の場合
血族相続人には順位があります。
第1順位(子など)がいない場合は、第2順位の父母・祖父母(直系尊属)が相続人となります。
彼らがいないときに初めて、第3順位である兄弟姉妹が法定相続人になります。
もし父親や母親がご存命であれば、彼らが相続人となり、遺産全体の3分の1の遺留分を持ちます。
思いがけない遺留分権利者(前婚の子など)がいる場合
「自分には子どもがいない」と思っていても、前婚の際の子、認知した子、養子、あるいは先に亡くなっている子に孫がいる場合、その人たち(孫は代襲相続人として)が相続人となり、遺留分を持ちます。
まずはご自身が亡くなった際、誰が法定相続人になるのか(推定相続人の確認)を戸籍等で正確に把握することが第一歩です。
事実婚・同性パートナーがいる場合
法律上の配偶者は常に法定相続人となり遺留分を持ちますが、事実婚のパートナーや同性パートナーには、法律上の相続権がありません。
遺言がなければ相続による財産の取得はできないため、パートナーの生活を守るためには遺言の作成が推奨されます。
「兄弟姉妹には遺留分がないなら、何もしなくても財産は渡らないだろう」というのは誤りです。
もしご両親や子ども(孫を含む)がおらず、遺言もなければ、疎遠であっても兄弟姉妹が法定相続人として財産を取得することになります。
友人やパートナーが、死後の葬儀や賃貸の解約などを手伝ってくれたとしても、遺言がない限り財産を受け取る権利はありません。
ご自身の意思を実現するためには、遺言による財産の承継(遺贈)と、死後の手続きを頼む「死後事務委任契約」などの備えを組み合わせておくことが重要です。
また、「疎遠な兄弟姉妹に1円も渡したくない」と財産を特定の人に集中させる内容は、感情的な反発や遺言の無効主張を招く場合があります。
紛争を避ける現実的な解決策として、「相続人である兄弟姉妹(または代襲相続人である甥・姪)に一定額を渡し、残りを友人へ遺贈する」といった配分を検討してもよいでしょう。あわせて、遺言になぜその配分にしたのか理由を記す「付言事項」を添えることも、争いの予防に役立つ可能性があります(※付言事項自体に法的拘束力はありません)。
法定相続人ではない友人・パートナーなどに財産を遺贈する場合、単に遺言書を書くだけでは実務上の手続きが進まないことがあります。
以下の5つのポイントを検討してください。
①遺言方式の選択と「発見されない」リスク
遺言書を書いても、死後に発見されなければ意味がありません。
また、「認知症で判断能力がなかった」など遺留分以外の理由で遺言の有効性が争われる可能性も残ります。
作成時の判断力を示す資料(医師の診断書等)を残すことが、紛争予防には有効です。
遺言の方式 | 特徴と発見を助ける仕組み | 実務上の注意点・弱点 |
|---|---|---|
自筆証書遺言 | 手軽に作成でき、費用がかからない。※発見者による家庭裁判所の検認が必要。 | 方式不備で無効になるリスク。自宅保管のため、紛失や死後に発見されないリスクが高い。 |
自筆証書遺言(自筆証書遺言書保管制度を利用する場合) | 法務局が保管(紛失・改ざんリスクなし、検認不要)。指定した人への死亡時通知機能がある。 | 本人が法務局へ出向く必要がある。内容の法的な有効性までは保証されない。手数料がかかる。 |
公正証書遺言 | 公証人が作成し原本を保管。方式不備による無効リスクは低い。死亡後、相続人や受遺者等が検索可能(検認不要)。 | 手数料がかかる。遺言能力の争いは完全には防げない。証人2名が必要だが、推定相続人や受遺者はなれない。遺言の存在を知らなければ検索されない。 |
※公正証書遺言を作る際「友人知人に証人を頼めない」という場合、公証役場に手配を依頼できる場合(有料)や、専門家を証人として手配するケースが一般的です。
※2026年の民法改正で「保管証書遺言」が設けられましたが、施行前のため本記事では扱いません(詳しくは当事務所コラム「パソコンで遺言書は作れる?2026年民法改正「保管証書遺言」と現行ルールの注意点」をご参照ください)。
また、どの方式を選ぶにせよ、遺言を託す遺言執行者や信頼できる人に「遺言書の存在と保管場所」を生前に伝えておくことが極めて重要です。
②遺言執行者の指定(登記申請と通知義務)
遺言執行者を指定していない場合、不動産の遺贈による所有権移転登記は、受遺者(友人や団体など)と法定相続人全員との共同申請になります。
疎遠な兄弟姉妹に協力や実印を求めなければならず、手続きが難航する原因になります。
遺言の中で「遺言執行者」を指定しておけば、相続人全員の協力は不要となり、受遺者と遺言執行者の共同申請で登記を進められます。
預貯金の解約も、金融機関ごとに運用は異なりますが、執行者がいることでスムーズに進めやすくなります。
ただし、指定された人が就任を断ることもあるため、事前に了承を得ておくことが実務上重要です。
また、執行者に就任した際は、遅滞なくすべての法定相続人に遺言の内容を通知する義務があります。
受遺者本人が執行者になることも可能ですが、疎遠な親族への通知や連絡の心理的負担を考慮し、弁護士、行政書士、司法書士、信託銀行などの第三者を執行者に指定し、報酬を定めておくケースも多く見られます。
※専門家が遺言の作成支援、証人、遺言執行者を兼ねることは、法律上直ちに禁止されているわけではありません。ただし、公証役場の運用や、同一人が複数の役割を担うことの是非については、事前に確認し、説明を受けたうえで決めてください。
③遺贈の種類(包括遺贈と特定遺贈)と漏れ財産
「全財産を友人Aに遺贈する」「遺産の2分の1を遺贈する」といった割合的な指定を包括遺贈と呼びます。
包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有するため、プラスの財産だけでなく借金などの債務も承継してしまいます。
項目 | 包括遺贈 | 特定遺贈 |
|---|---|---|
定義 | 「財産の全てを〇〇へ遺贈する。」や「財産の3分を1を△△へ遺贈する。」など、割合を決めて遺贈する | 「土地Aを〇〇へ遺贈する。」や「預金100万円を△△へ遺贈する。」具体的に指定して遺贈する |
債務の承継 | 原則として承継する | 承継しない |
遺贈の放棄 | 知った時から3か月以内に家庭裁判所で手続き(※放棄すると財産も受け取れない) | 相続人への放棄の意思表示のみ |
相続人との遺産分割協議 | 割合的包括遺贈の場合は必要(全部包括の場合は不要) | 不要 |
逆に、「〇〇銀行の預金」「自宅不動産」などと指定する特定遺贈だけでは、遺言に書き漏れた財産がそのまま兄弟姉妹に帰属してしまいます。
そのため、残余財産の処理(誰が受け取るか)も定めておく必要があります。
ただし、「その他一切の財産を〇〇に遺贈する」という条項は、残余の包括遺贈にあたる場合があり、その場合は債務も承継します。
事前に財産と債務を調査し、包括遺贈の税務上のメリットと債務承継のリスクを比較して設計することが不可欠です。
不動産を友人に管理させたくない場合(清算型遺贈)
不動産を売却し、現金化してから友人に渡す「清算型遺贈」という方法もあります。ただし、売却の見込みと時期、売却益への譲渡所得課税の負担者、納税資金の確保、遺言執行者の指定が前提となり、設計が複雑になるため、税理士等を交えて検討する必要があります。
④税務への配慮(2割加算・不動産取得税など)
相続人以外への遺贈には、特有の税負担が生じる場合があります。
(※具体的な税額計算や税務上の設計は、必ず税理士へ確認してください)
相続税の基礎控除と2割加算:遺産総額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)の範囲内であれば相続税はかかりません(※全財産を友人に遺贈する場合でも、法定相続人の数には兄弟姉妹がカウントされます)。これを超える場合、一親等の血族および配偶者以外(友人、パートナー、兄弟姉妹、甥姪など)は、相続税額が2割加算されます。
事実婚の税務上の不利:法律婚であれば「配偶者の税額軽減」などの優遇措置がありますが、事実婚・同性パートナーには適用されません。「小規模宅地等の特例」も対象外とされるのが一般的です。
登録免許税・不動産取得税:不動産を遺贈する場合、法定相続人(代襲相続人である甥・姪を含む)への移転登記は原則0.4%ですが、友人やパートナー、代襲相続人でない甥・姪への遺贈は原則2.0%となります。また、上記表の「特定遺贈」を選択した場合、相続人以外は不動産取得税も課税されます(不動産の所在地の都道府県の取扱いをご確認ください)。
団体への遺贈寄付:法人への遺贈では「みなし譲渡所得課税」が生じる可能性があります。公益法人等への非課税の特例もありますが、実際の税負担者は遺贈の形式等によって変わるため、事前の税理士への確認と、受け入れ団体への打診が不可欠です。
⑤予備的遺言(受遺者の先死亡等の事情変化)
遺言は生前であればいつでも撤回・変更が可能です。
一方で、遺言者より先に、財産を渡す予定だった友人・パートナーが亡くなっていた場合、その遺贈は原則として効力を生じません。
別段の定めがなければ、その財産は法定相続人(兄弟姉妹など)に帰属してしまいます。
受遺者の先死亡や遺贈の放棄など、将来の事情の変化に備え、「Aさんが受け取れない場合には、Bさんに遺贈する」といった予備的遺言を定めておくことが実務上極めて重要です。
遺言(遺贈)以外の選択肢
財産を残す方法は、遺言による遺贈だけではありません。
目的や財産状況に合わせて、次のような選択肢も考えられます。
いずれも身分関係や税に影響するため、慎重な検討が必要です。
婚姻届の提出(事実婚からの移行):異性カップルの場合の選択肢です。同性カップルは、現行法上、婚姻できません(最新の法令状況は要確認)。
パートナー間の養子縁組:養子は子として相続人になり遺留分を持つ一方、兄弟姉妹は相続人でなくなります。身分関係に大きな影響があり、離縁も容易ではないため、十分な検討が必要です。
生前に契約を結ぶ死因贈与:相手方の承諾を得て、死亡を条件に財産を渡す契約です。
生命保険の受取人指定:友人やパートナーを受取人に指定できれば、遺言が相続人に争われる可能性へのリスクヘッジにもなります(※保険会社により対応が異なります)。なお、受取人が相続人以外の場合、保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)は使えず、2割加算の対象になることがあります。
民事信託(家族信託):財産の管理・承継を契約で設計する方法です。

「兄弟姉妹には遺留分がない」という知識だけでは、ご自身の希望が実現できないことがあります。誰が相続人になるのかの調査から、遺言書の方式選び、遺言執行者の手配、死後事務委任まで、全体を俯瞰した設計が必要です。
当事務所では、ご自身の状況において「どのような備えが必要なのか」を整理する段階からサポートを行っております。また、不動産登記、税務申告、相続人間の紛争対応など、他士業による対応が必要なケースにおきましても、ご相談内容に応じて各士業への相談をご案内し、手続きが円滑に進むようお手伝いいたします。
まずは、お気軽にご相談ください。
【参考】
・民法(e-Gov法令検索)
・相続の放棄の申述(裁判所)
・特別縁故者に対する相続財産分与(裁判所)
・自筆証書遺言書保管制度(法務省)
・遺言(日本公証人連合会)
・相続税の2割加算(国税庁)
・相続税がかかる場合(国税庁)
・登録免許税の税額表(国税庁)
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本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的判断を保証するものではありません。ご自身の状況に応じた具体的な検討については、行政書士等の専門家にご相談ください。