千葉の終活相談|任意後見・死後事務委任・遺言

許認可関係はこちら

パソコンで遺言書は作れる?2026年民法改正「保管証書遺言(いわゆるデジタル遺言)」と現行ルールの注意点

最終更新日:2026年9月17日(法令基準日:2026年9月現在)

「遺言書をパソコンやWordで作成して、そのまま印刷できないだろうか」

日常の書類作成の多くがデジタル化している現在、遺言書だけを手書きすることに負担を感じる方もいるでしょう。

結論からいうと、2026年9月現在、自筆証書遺言の本文をパソコンで作成・印刷したものは、自筆証書遺言としての方式を満たさないため、有効な自筆証書遺言にはなりません。

2026年6月の民法等改正法(令和8年法律第45号)により、将来的にパソコン等による作成に対応する新しい遺言方式「保管証書遺言」の創設や押印要件の見直しが決まりましたが、現在は施行前のため利用できません。
(報道等では「デジタル遺言」と呼ばれることもありますが、法律上の名称は「保管証書遺言」です。書面で作成する方式も含まれるため、「デジタル遺言」と完全に同義というわけではありません。)

本コラムでは、現行ルールの注意点と2026年民法改正のポイントを整理し、「新制度を待つべきか」「今遺言を作るなら何に注意すべきか」を解説します。

※現行法には本文をパソコン等で作成できる「秘密証書遺言」という方式も存在しますが、実務上はほとんど利用されていません。本コラムでは、一般に広く利用されている「自筆証書遺言」「公正証書遺言」と、新設される「保管証書遺言」を中心に解説します。

2026年9月現在、自筆証書遺言の本文は手書きが必要

現行の民法第968条において、自筆証書遺言は「遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」と定められています。

そのため、Wordなどで本文を作成して印刷し、最後に本人が自筆で署名・押印したとしても、自筆証書遺言の方式を満たさず無効となります。

「財産目録」はパソコン作成が可能

現行でも、すべてを手書きしなければならないわけではありません。2019年の改正法施行以降、遺言本文とは別紙にした「財産目録」は、パソコン作成や通帳・登記事項証明書のコピー添付が認められています。

遺言本文(自筆必須):「別紙財産目録1記載の土地を長男○○に相続させる」といった指示部分

財産目録(パソコン可):不動産の所在地・地番、金融機関名や口座番号などの詳細一覧

自書によらない財産目録を使用する際の注意点

自書によらない財産目録を使用するときは、そのすべてのページに遺言者本人の署名・押印が必要です。用紙の両面に記載がある場合は、裏表両方に署名・押印しなければなりません。署名・押印を欠くと方式要件を満たさず、その財産目録に基づく遺言部分が無効となる可能性があります。

また、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用する場合は、上記のほかにもA4用紙の使用、規定の余白確保、片面記載など保管制度独自の様式上のルールも守る必要があります。

2026年改正で新設される「保管証書遺言(いわゆるデジタル遺言)」とは?

2026年の民法改正で創設が決まった「保管証書遺言」は、書面または電磁的記録(電子データ)を利用して作成できる新しい遺言方式です。これにより将来はパソコン等で本文を作成する選択肢が生まれますが、「自宅のPCで作って保存・送信すれば完成する」という制度ではありません。

最大の特徴:法務局での「保管」が保管証書遺言としての要件

現行の自筆証書遺言書保管制度では、民法上の方式に従って作成した自筆証書遺言を法務局で保管してもらうことができますが、法務局での保管自体は遺言の成立要件ではありません。

これに対し、新設される保管証書遺言は、法務局で保管されなければ、保管証書遺言としての効力を生じません。

※遺言の内容による財産承継等の効力は原則として遺言者が死亡した時に生じます。

手続きの流れ

  1. 書面または電磁的記録で遺言を作成する

  2. 署名または法務省令で定める代替措置を行う
    (※具体的な代替措置の内容は、今後の法務省令等で定められます)

  3. 遺言書保管官に対して保管を申請する

  4. 保管官の前で、原則として遺言の全文(財産目録を除く)を口述する
    (※申出があり保管官が相当と認めた場合はウェブ会議の利用も可能)

  5. 法務局で保管され、保管証書遺言としての方式が整う

手書きの負担は軽減されますが、本人確認、全文口述、法務局での保管といった厳格な手続きが求められます。

改正法施行後に押印が不要になっても「本人が作成したこと」の重要性は変わらない

2026年の法改正では、自筆証書遺言における「押印」が法律上の必須要件から削除され、遺言の全文・日付・氏名を自書することで、押印なしでも方式要件を満たす仕組みに変わります。

施行後は法律上は押印が不要になりますが、本人の意思で任意に押印すること自体は禁止されていません。

ただし、「実印を押せば遺言の有効性が100%保証される」わけでもなければ、「印鑑をなくせば争いが防げる」わけでもありません。

遺言の効力は、方式だけでなく、遺言者本人の真意に基づくものか、作成時に十分な遺言能力があったかなど、個別の事情から総合的に判断されます。

遺言書の紛失・隠匿・改ざん等のリスクを抑える方法としては、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」や、公証人が関与する「公正証書遺言」という方法もあります。

施行時期の違い|いつから使えるようになるの?

法改正の項目ごとに施行スケジュールが分かれています。具体的な施行期日は政令に委ねられていますが、法律上の期限(目安)は以下の通りです。

改正項目

法律上の施行期限

最も遅い場合の目安

2026年9月現在の状況

自筆証書遺言等の押印要件の見直し

公布日(2026年6月24日)から1年以内

〜2027年6月24日まで

未施行(現行通り押印必須)

保管証書遺言の新設

公布日(2026年6月24日)から3年以内

〜2029年6月24日まで

未施行(利用不可)

押印見直しの施行日前に作成された遺言には従来のルールが適用されます。現時点(2026年9月)では押印なしで自筆証書遺言を作成すると無効になりますのでご注意ください。

主な遺言方式と新制度の比較

項目

自筆証書遺言

公正証書遺言

保管証書遺言(新設)

本文のPC作成

不可(全文・日付・氏名を自書)※財産目録は可

本人の自書不要(公証人が作成)

可能(書面または電磁的記録)

押印等

現在:必須
改正施行後:任意(氏名の自書は必要)

電子サイン等(原則電磁的原本)
※一定の要件の下でリモート方式も可

署名または法務省令で定める代替措置

本人意思の確認

公証人等による内容・意思確認なし
※保管制度利用時は外形的な確認あり

公証人が真意確認+証人2名立会い

保管官の前で原則全文(財産目録を除く)を口述
(一定の場合ウェブ会議での対応可)

保管場所

自宅等
(保管制度利用の場合は法務局)

公証役場側(公証人連合会のシステム)

法務局での保管が効力発生要件

検認手続き

自宅保管:要
法務局保管:不要

不要

不要

利用時期

現在利用可能

現在利用可能

未施行(遅くとも2029年6月24日までに施行)

【補足:公正証書遺言のデジタル化について】
2025年10月1日以降、公正証書の原本は原則として電磁的記録(PDF等)で作成され、電子サイン等が導入されています。遺言公正証書についても、遺言者の申出があり、公証人が相当と認めるなど一定の要件を満たす場合には、ウェブ会議によるリモート方式を利用できることがあります。ただし、遺言は本人の意思確認が重要であるため、リモート方式の利用が相当かどうかは公証人によって慎重に判断されます。

新制度を待つべき?遺言作成のタイミングを判断する基準

「数年待てばパソコンで作れるようになるなら、それまで待とう」と考える方もいらっしゃるでしょう。

しかし、一律に待つべき、あるいは今すぐ書くべきと決めるのではなく、ご自身の状況に合わせて判断することが重要です。

待つか・今作るかを分ける判断基準

今作ることを検討したいケース:

新制度の施行を待つことも選択肢となり得るケース:

遺言は後から見直すことができる

遺言者は、遺言の方式に従って、いつでも遺言の全部または一部を撤回することができます(民法第1022条)。必要に応じて新たな遺言を作成することも可能です。

そのため、「今、現行制度に基づく方法で意思を残しておいて、生活状況や財産関係が変わったとき、あるいは保管証書遺言が施行された後に改めて見直す」という考え方もあります。

遺言は「一度作ったら一生変えられないもの」ではなく、「状況の変化に応じて見直していけるもの」なのです。

方式だけでなく「内容設計」も重要

遺言書は、手書きかPCかという形式に加え、内容自体の設計が極めて重要です。

※特定の相続人の遺留分を侵害する配分であっても遺言自体が直ちに無効になるわけではありませんが、相続開始後に遺留分侵害額請求の対象となる場合があります。

現在の自筆証書遺言書保管制度では、法務局が遺言書の方式について外形的な確認を行いますが、遺言内容そのものの法的妥当性や、財産の分け方について相談・審査する制度ではありません。

一方、公正証書遺言では公証人が本人の真意と法的な内容を確認しますが、将来の家族間の感情対立まで保証されるわけではありません。

どの方式を選ぶ場合でも、事前にご自身の希望をどのように遺言に反映するか整理することが大切です。

よくある質問(FAQ)

Q1.保管証書遺言(いわゆるデジタル遺言)はいつから使えるようになりますか?

公布日(2026年6月24日)から3年以内と定められており、遅くとも2029年6月24日までに政令で指定された日から施行されます。具体的な施行日は今後、政令で定められますので、法務省の最新情報をご確認ください。

Q2.今、パソコンで本文を打って印刷し、手書きで署名・押印した遺言書は有効ですか?

自筆証書遺言としては無効です。
2026年9月現在、自筆証書遺言は本文・日付・氏名をすべて自筆で書く必要があります(パソコン作成が認められているのは別紙の財産目録のみです)。

Q3.保管証書遺言の制度が施行されたら、自宅のパソコンで作った遺言書を自宅の金庫に保管しておくだけで有効になりますか?

いいえ、有効にはなりません。
新設される保管証書遺言は、法務局で保管されることが、保管証書遺言として成立するための要件となっています。

まとめ|「形式」だけでなく「自分の希望の整理」から進めましょう

現時点で遺言を作成する場合、一般的には「自筆証書遺言(自筆証書遺言書保管制度の利用を含む)」または「公正証書遺言」が主な選択肢となります。

将来の「保管証書遺言」を待つか、今作成しておくかは、健康状態や財産関係に応じて選ぶのが適切です。

まずは「誰に、どの財産を、どう遺したいのか」という希望を整理することから始めてみてください。

当事務所でサポートできること

遺言書を作成するにあたっては、方式の選択だけでなく、ご本人の希望や家族関係を整理し、将来の紛争リスク(遺留分等)を見据えた文案を検討することが重要です。

当事務所では、行政書士として対応可能な以下の業務を通じて、ご本人の希望に沿った遺言書作成をサポートしています。

「自分の財産状況ではどちらの方式が良いか」
「遺留分などの法的な留意点も踏まえて、遺言書の文案を整理したい」

といったご相談から承っております。お気軽にお問い合わせください。

(注:相続税の具体的申告・税務相談、相続登記の代理申請、紛争案件の交渉・訴訟代理など、行政書士の業務範囲を超える事項については、必要に応じて各専門家への相談をご案内いたします)


【参考】

「民法等の一部を改正する法律」(成年後見及び遺言の制度の見直し)について」(法務省)

「民法」(e-Gov法令検索)

「自筆証書遺言書保管制度」(法務省)

「遺言書を作成するときの注意点」(東京法務局)

「遺言」(日本公証人連合会)


本記事は2026年9月17日時点の法令等に基づく一般的な情報提供を目的としています。改正法の具体的な施行日や保管証書遺言の詳細な手続については、今後の政令・法務省令等により具体化される事項があります。実際に遺言書を作成する際は、最新の法令・制度をご確認ください。

コラムトップへ