ソラノイロ行政書士事務所
千葉のおひとりさま終活相談|任意後見・死後事務委任・遺言
「今は元気だから任意後見はまだ必要ない」と考えている方もいるかもしれません。しかし、老後の備えには「判断能力が低下した後」だけでなく、「判断能力はあるけれど、入院などで自分では動けない時期」があります。
また、配偶者に先立たれてひとりになったり、親族はいても頼れない・頼りたくない状況であったりすることもあるでしょう。
老後をひとりで生きることを考えたとき、不安になりやすいのが、病気や入院をしたときのこと、判断能力が低下したときのこと、そして亡くなった後の手続です。
こうした不安への備えは、お金を準備することだけではありません。
自分に関する情報を整理しておくこと、医療や介護について自分の希望を伝えておくこと、必要に応じて将来に備えた契約や遺言を準備することなど、「自分で決められるうちに将来への道筋をつくっておくこと」も大切です。
この記事では、老後をひとりで暮らしていくための代表的な備えを、「元気な今」から「自分で手続をすることが難しくなったとき」「判断能力が低下した後」「亡くなった後」まで、時間の流れに沿ってご紹介します。

最初に取り組みやすいのが、自分に関する情報の整理です。
たとえば、
緊急時に連絡してほしい人
かかりつけ医や服薬内容
マイナ保険証の利用状況や資格確認書の保管場所
預貯金や保険などの財産情報
賃貸借契約など住まいに関する情報
電気・ガス・通信などの契約
スマートフォンやインターネット上のサービス
などです。
法務省等が作成したエンディングノートにも、こうした情報を整理するための項目が設けられています。
特に注意したいのが、スマートフォンやインターネット上の契約などのデジタル情報です。
国民生活センターには、亡くなった方のスマートフォンを解除できず利用していたネット銀行が分からない、サブスクリプションを解約したくてもIDやパスワードが分からない、といった相談が寄せられています。
利用しているサービス名やID、端末のロック解除に必要な情報などを整理しておくことも、現在の終活では重要な備えの一つです。
一方、IDやパスワードは重要な個人情報でもあります。第三者に簡単に知られない方法で管理しながら、もしものときに必要な人が情報へたどり着ける方法を考えておきましょう。
自分がどのような生活を大切にしたいのか、もしものときにどのような医療やケアを望むのかについて、元気なうちから考えておくことも大切です。
厚生労働省では、自分が大切にしたいことや望む生き方、「もしものとき」の医療やケアについて前もって考え、家族や信頼できる人、医療・ケア関係者などと話し合う取組を「人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)」として案内しています。
ただし、自分の希望を書面に残したり、信頼できる人に伝えたりしたからといって、その人に当然に医療行為についての法的な同意権が与えられるわけではありません。
本人が意思を伝えられる場合には本人の意思決定が基本です。意思を伝えることが難しくなった場合には、それまでに本人が示してきた意思や価値観などを踏まえ、医療・ケアチームによる慎重な意思決定支援が行われます。
そのため、人生会議は「誰かに自分の代わりに決めてもらう準備」というよりも、「自分が何を大切にしているのかを、周囲の人が分かるようにしておく準備」と考えるとよいでしょう。
当事務所では、ご本人が大切にしていることや将来についての希望を整理し、エンディングノートなどの形にまとめるお手伝いをしています。
一方、具体的な医療やケアの内容、その選択や意思決定については、かかりつけ医をはじめとする医療・ケア関係者と十分に話し合うことが重要です。必要に応じて、地域包括支援センターなどの相談機関も活用しましょう。
「判断能力が低下したとき」だけが、支援が必要になる場面ではありません。
判断能力は十分にあっても、病気やけが、入院などによって、
銀行で手続をする
支払をする
役所で手続をする
介護サービスなどの契約をする
財産を管理する
といったことを自分で行うのが難しくなる場合があります。
そのような場合に備えて、信頼できる人に一定の財産管理や手続を委任しておく「財産管理等委任契約」を検討する方法があります。
財産管理等委任契約を締結するときには、本人が契約内容を理解し、判断できる状態であることが必要です。
契約では、
誰に任せるのか
どの財産を管理してもらうのか
どのような手続を代理してもらうのか
いつから委任を開始するのか
受任者からどのように報告を受けるのか
契約をどのような場合に終了させるのか
などを具体的に定めておくことが重要です。
任意後見制度とは異なり、財産管理等委任契約には、家庭裁判所が任意後見監督人を選任して受任者を監督するような法定の仕組みはありません。
そのため、信頼できる受任者を選ぶことはもちろん、財産管理の方法や報告方法などについても契約で明確にしておくことが重要になります。
なお、本人の判断能力が低下したからといって、通常の財産管理等委任契約が当然に終了するわけではありません。
そのため、将来任意後見制度を利用する予定がある場合には、どの時点で任意後見を開始し、財産管理等委任契約をどのように取り扱うのかについて、あらかじめ契約内容を整理しておく必要があります。たとえば、判断能力の低下が確認された場合の対応方法をあらかじめ契約書に定めておく、見守り契約を組み合わせるといった工夫が考えられます。
認知症などによって判断能力が不十分になった後の生活や財産管理に備える制度の一つが、任意後見制度です。
任意後見制度では、本人に十分な判断能力があるうちに、
「将来、誰に任意後見人になってもらうのか」
「どのような事務を任せるのか」
をあらかじめ契約で決めておきます。
任意後見契約は、公正証書によって締結しなければなりません。
2026年8月時点の現行制度では、その後、本人の判断能力が不十分になり、家庭裁判所が任意後見監督人を選任すると任意後見契約の効力が生じ、任意後見人が契約で定めた事務を本人に代わって行います。
財産管理等委任契約との大きな違いの一つは、任意後見が開始すると、家庭裁判所が選任した任意後見監督人による監督が行われることです。
判断能力があるうちは財産管理等委任契約による支援を受け、将来判断能力が不十分になった場合に任意後見制度を利用することを想定して、二つの契約をあらかじめ組み合わせて準備する方法があります。
このような契約形態は一般に「移行型」と呼ばれ、日本公証人連合会も、財産管理等委任契約と任意後見契約を組み合わせて締結する方法を案内しています。
ただし、二つの契約を結んだからといって、自動的に財産管理等委任契約から任意後見へ切り替わるわけではありません。
どの段階で任意後見を開始するのか、財産管理等委任契約をその後どのように取り扱うのかなど、あらかじめ契約内容を適切に定めておく必要があります。
また、すべての人に財産管理等委任契約と任意後見契約の両方が必要とは限りません。
財産の状況、年齢、健康状態、支援してくれる人の有無、将来希望する生活などによって、必要な備えは異なります。
ここまでご紹介した制度は、「いつ役割を果たすのか」で整理すると分かりやすくなります。

実際にはこれらの間の移行は自動的ではなく、あらかじめ契約で定めておく必要があります
重要なのは、この表にある契約をすべて結ぶことではありません。
「自分の場合、どの段階にどのような支援が必要なのか」を考え、必要なものを選んで準備しておくことが大切です。
また、任意後見契約や死後事務委任契約、遺言などは、実際にその役割を果たすのが将来であっても、本人が内容を理解し判断できるうちに準備しておく必要があります。
ひとり暮らしの場合は、住まいについての準備も重要です。
特に賃貸住宅では、自分が亡くなった後、賃貸借契約への対応や室内に残った家財の処理が必要になることがあります。
通常、賃借人が亡くなっただけで賃貸借契約が当然に終了するわけではありません。また、居室内に残された家財についても、相続の問題が生じます。
そのため、単身高齢者の死亡後に賃貸借契約や残置物を円滑に処理できるよう、国土交通省は「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を公表しています。
このモデルでは、主に、
賃貸借契約の解除等を行う「解除関係事務委任契約」
室内に残された家財等を処理する「残置物関係事務委託契約」
という仕組みが示されています。
現在の住まいについても、
契約者は誰か
保証人や緊急連絡先は誰か
入院や施設入所後も住まいを維持するのか
死亡後の家財をどのようにしてほしいのか
といったことを元気なうちに確認しておくとよいでしょう。
※このモデル契約は、後述する死後事務委任契約の一類型です。
亡くなった後への備えについては、大きく二つに分けて考えると分かりやすくなります。
一つは、
葬儀や納骨
住居への対応
電気・ガス・通信その他の契約への対応
遺品や家財への対応
役所や関係機関への各種手続
など、死亡後に必要になる事務を誰にお願いするのかという問題です。
こうした死亡後の事務について、生前に受任者と契約を結んでおく方法が「死後事務委任契約」です。
ただし、どのような事務でも自由に受任者へ任せられるわけではなく、個々の手続について法令や契約上、受任者が対応できるかを確認した上で委任内容を決める必要があります。
もう一つは、自分が亡くなった後、財産を誰にどのように引き継ぐのかという問題です。
自分の死後の財産承継について意思を残す代表的な方法が遺言です。
死後事務委任契約と遺言は、どちらも亡くなった後に関係する制度ですが、役割は同じではありません。
「亡くなった後の事務を誰に頼むのか」と「財産を誰に引き継ぐのか」を分けて考えることが重要です。
なお、相続人の間ですでに意見の対立がある場合や、遺産分割協議が難航している場合など、紛争性のある案件については、弁護士への相談が必要となることがあります。
当事務所へのご相談の過程で行政書士の業務範囲を超える問題が判明した場合には、必要に応じて適切な専門家への相談をご案内します。

老後をひとりで生きるための準備は、一度にすべての契約を結ぶことではありません。
まず、自分に関する情報を整理する。
医療や介護について、自分が大切にしたいことを考える。
病気になったとき、困ったときに誰へ連絡するのかを考える。
そして、自分の生活や財産、周囲の支援状況に応じて、必要であれば財産管理等委任契約、任意後見契約、死後事務委任契約、遺言などを検討していく。
こうした準備を少しずつ積み重ねておくことが、「今の生活」と「将来必要になる支援や手続」をつなぐ備えになります。
どこから手をつけたらよいか迷う場合には、まず自分の情報や希望を整理するところから始めてもよいでしょう。
ソラノイロ行政書士事務所では、エンディングノートの作成支援などを通じて現在の状況や将来の希望を整理し、その方に必要な備えを一緒に検討しています。
その上で、必要に応じて財産管理等委任契約、任意後見契約、死後事務委任契約、遺言などの書類作成・準備をお手伝いします。
すべての制度を利用する必要があるわけではありません。
「自分の場合は何を準備しておけばよいのだろう」と思われた段階から、お気軽にご相談ください。
※本記事は2026年8月時点で施行されている法令・制度に基づいて記載しています。
2026年6月17日に成年後見制度及び遺言制度を見直す「民法等の一部を改正する法律」が成立し、同年6月24日に公布されています。成年後見制度に関する改正部分は、公布の日から2年6か月以内の政令で定める日に施行される予定です。
任意後見制度についても、現在の「任意後見監督人が選任された時から効力を生じる」仕組みから、改正法施行後は「任意後見開始の審判」がされた時から効力を生じる仕組みへ変更されます。また、現在は必ず選任される任意後見監督人についても、家庭裁判所が明らかに監督の必要がないと認めるときは選任せず、家庭裁判所自身が直接監督する運用が可能になる見込みです(監督の仕組みそのものがなくなるわけではありません)。制度改正の施行後は、本記事の内容も改正後の制度に合わせて更新する必要があります。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的判断を保証するものではありません。ご自身の状況に応じた具体的な検討については、行政書士等の専門家にご相談ください。